第4章 生活支援  (その1:料理)

            
  つぶやき話のテーマ1:  苦手な分野 
          
 「炊飯、料理は苦手な分野である。これらは会社員時代に一切しなかった。           
  介護に従事して少しの期間、携わった経験がある。         」           
            
  やっと手段的日常生活動作(IADL)支援の章になった。簡単に言えば炊事、洗濯、掃除、買物           
 等の世話をすることである。これらの分野は私が苦手とするものである。なぜなら、会社員時代に           
 全てを家内に任せきりであり、携わったことがないからである。特に炊飯・料理は全く駄目である。           
 その私が介護に関連してこのIADL分野を書こうとするのである。できれば避けて通りたい。しかし           
 介護2本柱(ADL、IADL)の内、その1本(IADL)にあたる大切な分野である。省略するわけには           
 いかない。仕方なく取り組むことにした。幸か不幸か、S施設内で6ケ月の短期間であったが、           
 炊飯、料理に携わったことがある。その時の体験(失敗)が主なテーマとなる。
           
  S施設の入所形態は多床棟(相部屋)とユニット棟(10名程の小集団で各人個室)がある。           
 ユニット棟(ユニット型個室)の入所者は、各個人に対する介護サービスのグレードが高く、           
 その分料金の負担も高くなる。ユニット棟の介護職員に欠員が出来たので、急遽、私が           
 加わることになった。炊飯、料理以外のことは、多床棟で実践しているので対応できる。その           
 炊飯は先輩職員が伝授する。料理は一切の惣菜が厨房から送られてくるので盛合せをする           
 程度である。汁ものの惣菜も厨房から送られてくるので、汁(味噌汁、すまし汁)のみを準備する。           
 その味付けも先輩職員が伝授する。だからできるということでユニット棟の介護職員になった。
           
  ユニット棟の介護職員になったら、最初は電磁(IH)調理器具類の操作法の修得である。           
 炊飯器及び食器乾燥機等のボタン操作を覚えなければならない。それから汁の味付けである。           
 以後は、各テーマごとに、奮戦状況や失敗談を記述する。
           
            
            
  つぶやき話のテーマ2:  炊き込みご飯
           
 「炊き込みご飯は少し硬い方が良い。           
  かやくご飯は、少しおこげもほしい。」           
            
  まず私を悩ましたのは、当然のことだが炊飯である。具体的には、米の分量、米洗い、水加減、           
 白米と粥の区別、炊き上がり時間のタイマーセット等である。まず普通に白米を炊きたい場合は、           
 計量カップで、食される分量を用意し、米を磨ぎ、歯窯に記されている計量カップの数量まで           
 水を加える。この後は電源を入れてご飯を炊くだけである。ここまでは、私も理解できる。問題は           
 変更がある場合である。具体的には炊き込みご飯を作る時のことである。S施設では毎月初日の           
 お昼は赤飯である。小豆は硬めにゆでたものが厨房から送られてくる。お米は通常のうるち米を           
 利用する。もち米は誤嚥の危険性があるので使用しない。赤飯時の課題は、水分の加減である。           
 普通白米を炊く時と同じ水分量で良いか、悪いかである。先輩に聞いたら、ちょっと硬めに炊き           
 たいので、ほんのちょっと水分を控えめにしてほしいとのことであった。わからないことは聞けば           
 よいのだが、高齢者になると行ったことをすぐに忘れる。1ケ月後の赤飯の際は、すっかり忘れて           
 いる次第である。
           
  次は山菜等の炊き込みご飯の場合である。惣菜の山菜に少し汁がそえて、厨房から送られて           
 くる。お米は当然うるち米を使用する。炊き込みご飯の場合も課題は水加減である。これは硬めと           
 さらに少しおこげを作りたいのである。先輩に聞いたら、水を少しすくなくするとのことであった。           
 歯窯の硬め炊きの水分目盛りにあわせるとのことであった。初めて炊く山菜ごはん、うまくいくか           
 心配しながら炊き上がりを待った。炊き上がったら、ふたを開けて、歯窯内のごはんを掻き回した。           
 ちゃんとおこげも作られていた。早速、試食してみると、味もご飯にしみこんでいた。初めてに           
 しては、まあまあの炊き上がりであったので、内心ほっとした次第である。入所者の方々には、           
 美味しそうに食べていただけた。私は歯窯内のおこぼれ(残り飯)を食べた。美味かった。かやく           
 ご飯、豆ごはん等、管理栄養士が作成するメニューは豊富で、しかも季節の風味に富んでいる。           
         
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     つぶやき話のテーマ3: お粥
           
 「お粥は一気に炊かなければならない。白米から二度炊きすると思っていた。           
  お粥の課題も水加減である。粥には全粥と5分粥がある。       」           
            
  私は業務で中国上海のホテルに滞在したことがある。そのホテルの朝食は必ず粥であった。           
 私には粥は病人の食物との先入観がある。だから上海のホテルでは一切粥を食べなかった。           
 そのホテルには白米が用意されていなので、いつも朝食はパンとコーヒーで済ませていた。
           
  粥を食べない私がS施設の入所者のために粥を炊くのである。本音を言えば炊きたくない。ここは           
 仕事と割り切って粥を炊くことにした。生まれて初めて全粥を炊くのである。初夏なのに雪が降る           
 かもしれないと思いながら・・・。私は白米の残り物に、再度水を入れて炊くのが粥と思っていた。           
 ところが炊飯器は一気にお米から粥にしてしまうのである。しかも操作は簡単である。お米の分量           
 に合わせて、水分は全粥の水分目盛りに合わせればよい。後は電源を入れるだけ、実に簡単だ。           
 炊き上がったら、すぐに生卵をかけ、卵とじ粥を作った。試食したら塩気が少なかった。お茶碗に           
 粥を持った後、ごま塩を少し振りかけた。入所者には不平もなく食べていただいた。
           
  粥には全粥と5分粥がある。全粥は水気が少なく、5分粥は粥と水多めの重湯の状況である。           
 この違いを炊飯器は器用に炊き分けるのである。炊飯器は優れものである。自分で粥を作った           
 事から、美味しい粥は食べてみようと思っている。朝食に白米があれば、当然のごとく、白米を           
 選択する。

           
            
            
  つぶやき話のテーマ4: 惣菜の盛合せ
           
 「主なおかず、副食、デザート類の惣菜を、各個人の好みに合わせて盛り付ける。           
  食べやすくするために、主なおかずは小さく刻んだり、解したりして提供する。」           
            
  11:00に昼食用として厨房から惣菜が送られてくる。主菜、副菜、デザート、汁の具である。           
 この時までに、主食のご飯や、吸い物の汁は作り上げている。だから主菜、副菜、デザートを           
 お皿や器に盛り付ける。ただ、厨房から送られてきたままの状態で盛り付けるのではない。小さく           
 切り刻みしたり、ミキサーを利用して解したりする。入所者一人一人に合わせて、食べやすい           
 ように、手を加えて盛り付けするのである。なかには魚が嫌いな人には、別の主菜を提供する。           
 各個人の好みに合わせて盛り付けて配膳するのである。これを1時間で行わなければならない。           
 介護職員による食事介助、見守り介助が始まると、すぐに鍋等台所用品の洗いを始める。早めに           
 済ませないと、食事を済まされた方々の食器が返還されてくる。食器の残飯を整理して、残飯量           
 を計測記録する。返還された食器を素早く洗い、食器乾燥機に収め、乾燥が開始したら、私の           
 仕事は終了である。これを13:00までに終わらせるのである。家事に慣れた女性介護職員は           
 テキパキと行えるのである。私はテキパキと行えなかった。
           
  その後、入所者の方々と同じメニューの昼食(有料)を食べて帰宅するのである。私はこの           
 昼食は試食を兼ねて食べていた。主菜や副菜の味付け、掛け汁は、厨房でつくられている。           
 これらの味はしっかりついている。薄味ではない。このことは汁ものにも反映させていた。高齢者           
 になると、舌の味覚感覚が弱まるので、どうしても味付けは濃くせざるを得ない。           
          

  
            
  つぶやき話のテーマ5: 汁もの
           
 「汁ものは、主に味噌汁とすまし汁である。汁だけは鍋に、事前に           
  作っておく。汁ものの具が届いたら、すぐに鍋へ入れるだけだ。」           
            
  汁ものは主に味噌汁とすまし汁である。 味噌汁は濃い目に作る。すまし汁はダシの元(粉末)           
 を利用して、少し醤油、味醂、日本酒で味をくわえた。これは先輩職員からの伝授である。これで           
 汁そのものはできた。汁の具材として、豆腐やほうれん草が用意されている。豆腐は包装ケース           
 から取り出し、包丁で刻んで味噌汁鍋へ入れていく。刻む大きさは5mm角ほどにした。これは           
 刻み食やとろみ食を基準にしたためである。普通の白米を食べている人は、豆腐が小さすぎて           
 物足りなかったかもしれない。豆腐の大きさまで、各個人の要望に合わせることはできなかった。
           
  ほうれん草はすまし汁にいれて、生卵を溶き、流し込んで卵とじを作っていた。汁を煮詰めたら           
 卵成分が硬くなってしまう。作ったら素早く、お椀へ注いで配膳盆へ置いていた。
                                               
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     つぶやき話のテーマ6: そうめん
          
 「キャンプの定番メニューは、カレーライス、野菜サラダ、そうめんだ。          
  そうめんだけは確実に作れる。ただお湯でゆでるだけだから。   」          
           
  私が確実に作れると人に言えるのは、そうめんだけであろう。ただゆでるだけで、簡単に作れる          
 からである。ゆであがったら、冷水をかけ流す。その後、氷で冷やしながら冷蔵庫で保管する。          
 次につゆを作る。市販のめんつゆを利用して作る。つゆの熱い冷たいは食べる季節に合わせれ          
 ばよい。食事をする時点になって、そうめんをお椀に盛りつゆをかけ薬味を振りかければ、すぐに          
 食べられる。このそうめんを食べない入所者には、まだあったことがない。誰も好きなようだ。
          
  このそうめんでさえも私は料理に失敗するのである。私は鍋焼きうどんのように腰の無い麺が          
 好きである。それは伸びたラーメンでも好きである。この個人的な好みが、そうめんにも影響した          
 のである。入所者の方々が食べ終わられた後、介護職員は昼食をする。その昼食用そうめんに          
 つゆをかけたまま、冷蔵庫で保管したのである。私は長い時間つゆにつかったそうめんを平気で          
 食べるのである。この感覚が、つけ(のびた)そうめんを作ってしまったのである。台所用品を早く          
 洗い終わってしまいたかったことも一要因である。つい、うっかり、個人的な好みが行動に表れて          
 しまったのである。昼食をする介護職員には、平に謝った次第である。

          
           
           
  つぶやき話のテーマ7: カレー
          
 「カレーライスはご飯を準備するだけである。          
  カレーうどんは、生めんのうどんをゆでるだけである。」          
           
  カレーも私が確実に作れるものである。S施設では厨房でカレーはすべて調理されて送られて          
 くる。カレーうどんがメニューとなっている時は生麺うどんをゆでてどんぶりに入れ、カレー汁を          
 かけて終了である。刻み食の方には、うどんを刻み、ゆでてどんぶりへ入れる手間が発生する。          
 主菜がカレーうどんで、主食のご飯が必要になる。そこでご飯は少なめな、にぎりめしにする。          
 押ずしを作るような型木(プラスティック製)を利用してにぎり飯を作るのである。できたらごま塩を          
 少し振りかけておく。介護職員用の昼食は、ラップを利用して大きめのにぎりめしを作っておく。          
 さすがにうどんは茹でずに包装にはいったままにして、食べる時、当人がゆでるように頼んで          
 おいた。のびてしまったうどんは提供したくない。そうめんの失敗は繰り返さない。
          
  カレーには後日談がある。家内の誕生日に、私が家事をすることにした。そこでカレーを作る          
 ことにした。ジャガイモ、ニンジン、玉ネギ、鶏肉を煮て、カレールーを入れて炊きつめた。ご飯も          
 白米を炊き上げていた。さあ、カレーライスを食べ始めた。家内が一言。「あれ、ジャガイモや          
 ニンジンが入っていない」。私もカレーを食べた。確かにジャガイモが見当たらない。あった。          
 米粒ほどのニンジンが出てきた。私はジャガイモやニンジンを1cmのサイコロ状に刻んでいた。          
 カレーを炊きつめる時、ジャガイモやニンジンは、溶けてしまったのである。私は介護食を作る時          
 惣菜を小さく切り刻むので、ついカレー用のジャガイモやニンジンを小さく切り刻んでいたので          
 ある。介護食と普通食の区別をしなかったためである。又、失敗をした。

          
           
           
  つぶやき話のテーマ8: パンの耳
          
 「朝、食パンの人はパンの耳が硬いので食べられない。提供する前に          
  パンの耳を落としておく。パンの耳は捨てずに冷蔵庫で保管する。」          
           
  朝食はパン食の入所者がおられる。そのパンは菓子パン類ではなくて、食パンが提供される。          
 食パンの人はパンの耳が硬いので食べられない。そこで耳の部分を落とす。中の柔らかい部分          
 2~3㎝の正方形に刻む。指でつまんで食べやすくするためである。その正方形片に糖分調整の          
 ジャムをつけるのである。又焼きトーストを提供することもある。この場合は、手持ちのジャムや          
 マーマレードをぬって提供する。各個人の好みに合わせた食事の提供である。
          
  さて、冷蔵庫に保管したパンの耳をどうするかである。パン耳の量が幾分かたまると介護職員          
 が調理してくれる。オリーブオイルでパンの耳を揚げて、棒ドウナッツを作ってくれるのである。          
 耳を揚げて、シュガーを振りかけておしまい。試食して美味しい。この棒ドウナッツはおやつの時、          
 入所者へ提供される。入所者も甘い棒ドウナッツが大好きである。オリーブオイルで揚げている          
 ので、便秘気味の人は、胃腸の調子も良くなり便通も快適であろう。食物が薬である。

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     つぶやき話のテーマ9: お膳用名前札 
         
 「10名程の方に食事を用意するが、刻み食やとろみ食等区別がある。          
  配膳内容を間違わないように、お盆の上に置く名前札を用意した。」          
           
  入所者の皆様が、同じ器や同じ食事メニューであれば準備は容易である。誰それと区別する          
 必要はない。ところがユニット棟入所者の場合は、特に個別性が重要視されている。当然、          
 食事に対しても、それぞれに区別がある。そこで10人分のお膳盆をならべて、介護食の準備を          
 するのである。なかなか10人分のお膳盆の配列を、正しく覚えきれないのである。たまに間違い          
 そうになる。そこで名前間違い防止に、名札を作り、準備時間中はお膳盆に置いている。これは          
 我ながら誤配膳防止には有効であったと思っている。少人数であるので同性同名の方を居られ          
 なかった。名札に介護食の内容を書いておくのも有効である。普通食、刻み食、ソフト食である。          
 さらに、留意事項も書いておけるので便利な方法である。

          
           
           
  つぶやき話のテーマ10: 食器洗い乾燥機
          
 「ご飯茶わんは、各人がそれそれ個人持ちとなっている。食事が終わるたびに、          
  茶碗を洗って乾燥させなければならない。そこで食器洗い乾燥機の出番である。」          
           
  ユニット棟では朝食に使用した食器はすぐに洗い乾燥させて、昼食時にも使用する。食器を          
 機械で水洗いから乾燥までしていると、他の台所用品等を乾燥させることができない。そこで          
 食器洗いは手作業にして、乾燥のみを機械で対応している。それで食器洗い乾燥機は乾燥機          
 として常時稼働している。台所用品を乾燥させると、次は食事用食器類である。5種類程の食器          
 を10人分乾燥させる。次は、休憩時間やおやつ時に使用した湯呑やカップ類、匙、フォーク等          
 を乾燥させるのである。この乾燥機が調子悪いと大変である。なだめすかしてでも働いてもらわな          
 ければならない。引出しがきちっと閉まらなかったり、タッチパネルが接触不良になったりである。          
 IH(電磁)ヒーターは2ユニットあり、炊飯器は2台ある。1台は食器洗い乾燥機だけである。          
 利用しているIH(電磁)台所は業務用ではなく、普通の家庭用である。それで8~10人程対応          
 するのが限度であろう。          
           
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