第11章 ヒヤリハット

           
  つぶやき話のテーマ1:  移動検出センサー
           
 [ベッド付近には移動検出センサーが設置されている。ヒヤリハットの提案に           
   センサーのスィッチ(SW)オフを発見が多い。SWオフの真犯人は私だった。]          
            
  私はベッドメイキングをする時、ベッド付近に設置の移動検出センサーのSWをオフにする。           
 それは移動検出センサーを避けようとすると、作業が非常にしにくい。誤ってセンサーに触れる           
 ことさえある。そこで私はセンサーSWがオンになっていれば、オフにしていた。作業が終われば           
 センサーSWをオンにすれば良いと考えていた。ある時点までは起床後の移動検出センサーSWは           
 オンあり、オフありの状態であった。ところが食後に自力で部屋へ帰り、ベッドで休憩される           
 方がおられた。以後、すべてのセンサーSWは、常時オンの状態になった。それでセンサーSWの           
 戻し忘れが、発見されるようになったのである。             
  私はベッドメイキングの作業中はSWをオフにして、作業が終了したらSWをオンにする。その後、
私は移動検出センサーが正しく働くかを知るため、わざとセンサー部分に触れて、その検出音を
 聞いて、SWを元に戻したことを確認するようにした。これが私のセンサーSW戻し忘れの再発防止           
 策である。
           
  移動検出センサーは構造面から、大きく2種類に分けることができる。第一はマット様式である。           
 ベッドの敷マットの一部に、移動検出マットを敷く。これは寝ている時はならず、寝起き等の変化           
 を検出して作動するものである。同じ様式の移動検出マットを床(足置き部分)に敷いて、要介           
 護者がベッドから起きて、床に敷いた移動検出マットに足を乗せると作動する。           
  第二は電子的な差異検出様式である。具体的に言えば、ガレージランプの点灯センサーと           
 同一である。当該センサーで、室内の床面を180度監視しており、一部でも物体が移動すれば           
 作動するのである。監視している物体は、主に人間の足である。要介護者がベッドから起きて、           
 床に足をつける等の動作を検出すると作動する。
           
  移動検出センサーが作動すると発信機を働かせて鳴動音を発生させる。鳴動音のなり方に区別           
 がある。ピッピッピッピッ。ピーピーピーピー。ピンポンピンポン。プップップップッ等である。           
 この鳴動音の違いは何を表すか?それは移動検出センサーの対象者の誰々さん。即ち氏名を表す           
 のである。介護職員は鳴動音を聞き分け、該当者がいる部屋へ直行するのである。要介護者が、           
 転倒・転落していないようにと願いながら。
           
  朝の起床時、XXさんの移動検出センサーが鳴動した。介護職員はXXさんの部屋へ、すぐ           
 には移動しなかった。XXさんの朝の行動パターンは、起床後、しばらくベッドに座っている。           
 その間、身だしなみを整える。髪にブラシをかけている。これらが終わって洗面所へ移動始める。           
 身だしなみを整え終わった時分に、XXさんの部屋へ行けばよいのだ。洗面所へ行かれるための           
 移乗・移動介助を行うのだ。人の行動パターンに合わせた対応である。
            
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  つぶやき話のテーマ2:  人の癖
          
 [ヒヤリハットの中心的な対象として、要介護者の行動をあげてほしい。その行動に          
  危険性が含まれているか否かを検討するのである。人の癖は思わぬ行動となる。  ]          
           
  前章の移動検出センサーは何のために設置しているか?それは要介護者が、自立で移動や歩行          
 しようとして動き出した時にベッドから落ちたり、ポータブルトイレへ行こうとして転倒したり          
 することを回避するためである。即ち移動検出センサーは転倒・転落事故の防止用機材である。
          
  介護職員は耳を澄まして移動検出センサーの音を聞いており音が聞こえたら、その都度ヒヤリ          
 ハットしているのである。この音が鳴りだすと、ひやひやしながら介護職員は慌てて当該部屋へ          
 向かう。介護職員が通路を走って当該部屋へ行ったらそれは危険である。介護職員が躓いて転倒          
 しかねない本末転倒である。生産工場内では工員を絶対に走らせない。
          
  話を先に進めよう。移動検出センサー音の回数だけ、ヒヤリハットの件数が発生しているので          
 ある。しからば、その音の回数分、報告書が書かれているとは思えない。この報告書にないヒヤリ          
 ハットの根本的な要因こそ討議してその対策こそが再発防止策になると思う。では根本的な要因          
 とは何であろう。それは要介護者の生活習慣や癖が大いに影響しているものと思う。
          
  食卓下に落ちている一粒のご飯を、車椅子に座りながら背中を倒して、指先でつまむ人のこと          
 を前章に書いた。この行動はその人の生活信条であり習慣であろう。当然、その行動は転落の          
 危険性がある。食後すぐに食卓下をきれいに清掃して、ご飯粒が落ちていない状態にすることが          
 根本的な再発防止策であろう。
          
  また、床の汚れが気にかかる人(女性)もおられる。その人はソファーに座って休憩されている。          
 その内に、ソファーに座りながら背中を倒して、手を床につけてある。その指先の爪で床をこすり          
 始めた。近寄り床を見ると、黒い斑点の汚れである。一粒のご飯より小さい汚れである。足元の          
 床を清掃されていることが理解できたので、姿勢を正してもらった。すぐに湿りウェスで汚れをふき          
 取った。これで満足されたかを聞いた。その人は満足である。以前と同じようにソファーで休憩で          
 ある。足元の床を美しくされることは、部屋清掃の習慣によるものであろう。この行動の再発防止          
 策は、特にソファー周りは塵ひとつ落ちていないように清掃することである。念のために、前屈で          
 転落しないように、ソファー前に袖机を置くようにした。

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