2019.7.31  読売新聞オンラインを読んで

 大阪府守口市のS障がい者施設で、今年の6月、同市のI君(12歳)が、食物をのどに詰まらせ、搬送先の病院で約3週間後に死亡していた。I君はあごの力が弱く、食べ物を細かくきざむ必要があったが、施設側は府の調査に「いつもより大きいまま提供した」と説明している。府によると、から揚げとミートボール等が出され、食事の介助は通常とは別の職員が担当していた。I君の父親は「食事の注意点が職員間で引き継がれていたか疑問である。息子が苦しんだと思うと許せない」と話す。

 

 私見

 まず亡くなられたI君のご冥福を祈ります。

 マスコミや紙面では、ちょっとした事案扱いである。こういう事案こそ大問題である。なぜなら食物の取り扱いの再発防止策は非常に、地味で徹底に大変な労力を要するからである。指示伝達漏れを起こしやすいのである。一般的な健常者、健常な介助者は、食物の大きさは気にもかけないことである。ところが嚥下機能の弱い要介護者にとっては、食物の大きさはのどに詰まらせて窒息死するなど、命に係わる大問題となるのである。さらに、食物アレルギーについても同一である。

 それでは指示伝達漏れをなくするにはどうするかである。職制の上司から職員間の引継ぎノートや個人別ケアプラン及び注意事項シートなどで伝達指示をしている。読まなかった職員が悪い。このように言われたら、介護職員はたまったものではない。古株(通常)や新人(別の職員)にも、注意事項が簡単にわかるように、「見える化」をして、介助動作の自己確認が行えるようにしなければならない。

 

 食べ物を配膳する時は、食事トレーに器や皿を並べ、食物を調理して盛り付ける。その食事トレーには、配膳を間違わないように氏名プレートを置くはずである。その氏名プレートには、食物に関する大きさ区分(並食、刻み食、ペースト食、トロミ必要等)の注意メモを明記できる。このようにすると、調理する人、配膳する人、食事介助をする人等、複数人によって食事の注意事項がチェック確認されるのである。看護師による食着時の服薬についても、同様なようなことが言える。

 

 組織や上司がしなければならないことは人はミスをすると認識し、そのミスを防ぐような仕組み(所作)を作りだし、職員に仕組みを愚直に実践させることである。すべての責任は組織にあって、介護職員だけにあるのではない。                         起稿   2019.08.07 

 

 

2020.07.02 朝日新聞 朝刊 社会26面を読んで

見出し:障害者施設 食事詰り中1死亡 職員6人 業務上過失致死容疑で書類送検

 

記事概要:施設側は食材を細かく刻んで提供する必要があったが、6人はそうした安全管理を怠り、I君を死亡させた疑いがある。6人とは、普段食事介助をするA(男性42歳)とB(女性50歳)で、事故時A・Bは別の業務中。代わりに非正規職員C(男性45歳)が一人で介助に当たった。Cは「刻んだものしか食べられないとは知らなかった」と説明している。守口署は3人の間で十分な引継ぎがなく、当日の責任者D(女性49歳)や施設長E(男性46歳)、上司のF(女性48歳)も安全対策を怠る等複合的な過失で事故が起きたと判断した。同法人の担当者は「警察の判断を真摯に受け止めたい。職員の研修などに取り組んでおり、二度と同じことが起きないようにしていく」と話した。

 

 私見(ぼやき) 

 警察署が食事介助をした本人Cだけでなく、組織全体で安全に対する注意義務違反ありと、判断したものである。これはおそらく刑事上、民事上でも裁判沙汰になるであろう。今後の交渉経過を見守りたい。

 私は、人間はミスをする者、その人為ミスで致命傷に至らないように、組織がリカバリーできる仕掛けを、作り出すかである。人間にミスをするなと教習しただけではなくならない。ミス撲滅の仕掛けや手法を明示してほしい。S施設だけでなく他の施設にも参考になるようなものが欲しい。これでI君の無念さが、少しでも生かせると思う。                    起稿   2020.07.02