朝日新聞 2017.8.19 朝刊より

   岐阜県高山市の介護老人保健施設(略して、老健。通称、老人病院)で、20日間に、5人死傷「1人は病気」。事故か事件かわからず、すべて五里霧中であるとのこと。

 

  死亡された3名の方のご冥福と、入院されている2名の方の早い回復を願っています。

 

 まず7月31日に男性(80才)は、施設内で夕食中に、のどを詰まらせる。搬送先の病院で死亡。老健側では本件を病気と思っているとの見解である。えゝ? 誤嚥が病気とは初めて聞いた。食事中は、介護職員による見守りや食事介助が行われているはず。見守り漏れ、不適切な食事介助によって、誤嚥を起こし呼吸困難となって窒息死したのではないのか? それではなくて病気というのであれば原因や病原菌があるのですか?これは何という病名であろうか?本気で問い合わせしてみたいものだ。

 介護施設では、通常、誤嚥を即座に事故と認識する。その誤嚥を発生させた要因や原因を究明して、再発させないように対策を決めるはずである。本介護施設では、誤嚥を病気と認識しているので、再発防止策を検討したバズもないと推測する。

 もし職員が誤嚥を誘発させたら、その職員を食事介助から外して、それ以外の身体介助を担当させる。その間、当該職員はマニュアルや実技での食事介助研修を受けさせて、技術の徹底・向上を図らせる。食事の見守り不足が原因であれば、食事中は職員数をもう一人増やして、見守り漏れを防ぐようにするはずである。

 まず、第1件目から施設の対応がなっていない。これは遺族から訴訟されても仕方あるまい。もしかすると施設側は見解を翻し、故意・意図的なものであったかもしれないと、発言するのかもしれない。全く、施設側の態度がなっていない。責任逃れの典型である。しかも、人が死ぬのを見慣れている病院だからの態度のように思う。

 

 第2件目、8月6日、女性(93才)、深夜に居室で倒れていた。頭蓋骨折で搬送先の病院で死亡。

 これも、まず事故と認識して、倒れた状況を発見した施設職員に、事情を聞くなり、書かせるなどして、

記録を残すのである。なぜ深夜に起床して、転倒したのか、頭をどこにぶっつけたのかを調べて、原因を究明していくのである。これらの究明作業をした後、再発防止策を決定するのである。この再発防止策の説明も

新聞には記載されていない。検討されていないものと推測する。

 

 第3件目、8月12日、女性(87才)、体調不良で病院へ搬送。翌日、病院で死亡。県警で司法解剖の結果、死因は外傷性血気胸と判明した。

 第4件目、8月15日、女性(91才)、複数の肋骨に骨折見つかる。病院に入院中。

 第5件目、8月16日、女性(93才)、胸にあざが見つかり、病院へ搬送。肺座礁と診断。入院中。

 

 短期間に不思議な死傷事案が相次いだことにより、施設も異常な事故もしくは不審な事案と思い始めたのであろう。責任者の説明が、8月の女性4人の事案について「事故か意図的のどちらか。五里霧中の状態です」

と説明した。

 「事故の再発防止策はとことんやりました。意図的なものであってほしくない」とカッコよく説明できないものですか? 施設側は、あたかも意図的な原因(殺人事件)であることを願っているようだ。仮に本事案が殺人事件であっても、施設の責任は免れるものではない。原因は施設職員の労務管理不足である。もし、殺人事件であれば、全国的な再発防止策(法律)を作ることになるであろう。 

 

 以前の事件に関しても掲載したが、同様な事案が短期間で3件程発生しないと、人は皆、異常とは気づかないらしい。連続3件は異常事象であると認識する法則である。

                                     2017.8.19 掲載

 

 

 介護現場の職員(ケアーワーカー)は本事案で、頭や心のなかは戦々恐々だ。

 

 私の勤めている介護施設で、今朝、私が多床棟でベッドメイキングの準備をしている時である。A女性職員が、リクライニング車椅子を、男性(80才、体重55キロ)Bさんのベッドに横付けした。私は、A職員に「あんたは、Bさんを一人でベッドから車椅子に移乗させるつもりか?、一人で行うと、どこかの施設のように、Bさんの肋骨を折るぞ」と声をかけた。私に手伝ってくれというのかなと思いながら、問いかけたのである。A職員は、「二人で移乗しますので、相手が来るのを待っています」と返事した。私は、基本的な身体介助の心得をA職員は身につけていると納得し満足した。ところが、A職員の追加返答に、私は愕然とした。

 

 「肋骨を折るような身体介助をしたら、この施設を首になります。働けなかったら、生活費に響きます」

A職員は、事故を発生させると介護施設を解雇されると心配しているのである。事案そのものではない。身体介助のミスで、事故を発生させると解雇される。ちょっとしたミスで解雇されるのではと、戦々恐々なのである。私はA職員の上司ヘ、職員が戦々恐々にならないように、事故対策法の共有・再徹底、更にヒヤリハット情報収集を促進するように進言した。本事案に対する、介護職員の心のケアが必要であると感じた。

 

 通常、介護施設では事故が発生すると、当該事故の発生要因を追及して、人的・組織的な面からの再発防止策を徹底するのである。事故の内で病院へ搬送するような重大事故は、介護保険事業主(市町村)へ報告するのである。 また、事故になっていないが、事故に発展しそうな危険な要因や事象を洗い出す作業(ヒヤリハット)で、情報収集して、その危険性を取り除く事前に対策までしているのである。

 

 岐阜県高山市の老健の事案が、早期に解決することを願っている。まず、当該介護施設はすべての事案を、事故と認識して、その再発防止策を検討して実施すべきである。警察任せでは、根本的な解決にならない。

                                     2017.8.29 起稿

 

 

 

 朝日新聞 2019.2.4 朝刊より

   岐阜5人死傷の介護施設 元職員、入所者に傷害容疑で逮捕

 元職員のO容疑者は17年8月15日午後2時10分ごろ、入所者の女性(当時91才)に暴行を加え、

両肋骨骨折など2ケ月の重傷を負わせた疑いがある。女性は1ケ月後に病院を退院したが、その後体調を

崩し、10月3日に老衰で死亡した。O容疑者は女性がけがをした当日、この女性の介護を担当していた。

 O容疑者はいずれの入所者の介護にかかわっていたという。県警は他の入所者死傷事件についても、

O容疑者の関与を調べる方針。

 

 ぼやき

 第4件目の事案をについて、県警が傷害事件と判断した。それに伴って、5人死傷の事案を全て事件と

みなしている。即ち全ての事案は事故ではない。故意による殺人事件とみなしている。

 介護施設は五里霧中でなくて、県警がすべて殺人事件とみなしているので、さぞ安堵していることで

あろう。本当にそれでよいのか、はなはだ疑問に思う。特に介護施設の反省点、予防策、再発防止策等の

取り組み状況を、報じてもらいたいものである。

 最後にすべての真実が明らかになることを願っている。             2019.2.4 起稿