週刊朝日 2019.7.12版 「殺されない 老人ホームの見分け方 7カ条」を読んで

 見出し: 今や老人ホームでは、入所者への虐待のみならず、殺人にまで発展するケースがみられるようになった。常勤医師不在の4カ月の間に入所者11人が死亡するという、ずさんな施設があることも明るみに出た。殺されないための老人ホームの見分け方について、専門家の声を紹介する。

 

 殺されないための注意:7カ条

  ①地域住民との交流  ②職員の離職率  ③看護が24時間体制か 

        ④建物の豪華さに惑わされない  ⑤小規模多機能型居宅介護(グループホーム)の活用 

        ⑥施設経営者の経歴や理念  ⑦ぎりぎりまでの在宅介護を

 以上は、週刊誌に記載された内容である。 

 

 上記内容を十分に理解するには、まず老人ホームの種類を理解しておくことです。

その種類は、ほぼ次の通りです。

   ①介護老人保健施設(俗称:老健、老人病院)  ②介護療養型医療施設(介護療養病床)

   ③介護老人福祉施設=特別養護老人ホーム(特養)

   ④「介護」サービス付き高齢者住宅(サ高住)

   ⑤グループホーム「小規模多機能型居宅事業/認知症対応型老人共同生活事業の施設」

   ⑥介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)

   ⑦養護老人ホーム ⑧シルバーハウジング/高齢者住宅 ⑨有料老人ホーム ⑩その他

           

 

  私見

 内容の詳細は、週刊誌を購入して読んでください。週刊誌の最終結論は、7カ条の⑦と思っている。

某研究所の理事長の主張を転記する。「介護人材不足はますます進んでいく。施設にいると人材難で集まってきた不適格な担当者(介護職員)によって命まで奪われてします。施設に頼りすぎず、在宅での介護をぎりぎりまで続けることが大事である。」

 

 老人ホームで、医師・看護師が常在しているのは、①、②の医療系施設である。

 ③の特養には医師は常在しない。看護師は規定数常在する。24時間勤務ではない。夜間はオンコール(呼び出し)対応である。介護職員は24時間常在する。入居施設の介護職員は、介護関連有資格者、無資格者及び介護未経験者でも身体介助はできる。ここまで介護職の求人枠を広げても、職員不足である。就職氷河期の時代は建設現場のお兄ちゃんが働いてくれていたが、アベノミクスのおかげで景気が良くなり、建設現場に戻ってしまった。当然、介護職場はさらに求人難となった。よって外国人まで採用しようとしているのである。入居施設は増えたが、介護職員不足により施設入所希望者を入所させることができない状況となっている。

 ④は、③の特養にほぼ同じと考えてよい。

 ⑤から⑧までの施設に医師、看護師は常在しない

 

 そもそも介護保険で許可設立されたのが、①の介護老人保健施設である。だからこの施設は医師、看護師、介護士が常在する。だが、この施設は経営面からほとんど大病院の子・孫病院となったため、ある時期から一切設立許可がなされていない。

 

 ②から⑩までの施設は、介護保険のサービス事業(メニュー)の作業できるので、介護保険者(市町村)に申請して、介護事業者の指定をもらっているものである。各施設によって、設立の根拠となった法律等が相違するので、それぞれの施設で、職員体制(資格や人数)には大きな差異がある。特養で医師が不在は問題ではない。老健で医師が不在は大問題である。

 これらの差異を知ったうえで、週刊誌の内容を読んでほしい。

 

     経済的な面から考えてみる。団塊世代は約25萬円/月の年金で、夫婦二人つつましやかに生活している。

この年金で各種税金及び健康保険料・介護保険料を払っている。残りが生活費用である。このような状況で、配偶者が要介護の状態になったとする。介護施設に入所すると、総額で14~17萬円/月の介護サービス使用料(家賃、食事代、介護メニュー代、雑費他)が発生する。月々の家計簿は大赤字だ。仕方なく預貯金で支払うしかない。

 配偶者が80歳で介護が必要となった。まずはホームヘルパー利用、ディサービス利用、短期入所生活・療養介護(ショートスティ)を利用する。その他の有償無償オプションサービスを利用する。どうにも対応できなくなる時分(要介護度3以上)から、本気で施設を探し始め、待ちに待って、やっと85歳で入所できた。

 95歳まで10年間入所すると2040萬円の出費だ。計算式は(17萬円×12ヶ月×10ヶ年=2040萬円)で、まるで家をリホームするような費用である。今、世間で風評されている話(95歳まで生活するには、年金が2000萬円不足する)がある。その年金不足の話よりも介護サービス使用料は明確に試算できて、より切実な話である。

 介護が必要な状態(仮呼称:介護症)は病気と同じであろう。だから介護症の人には介護保険を利用いただき、健康者は万が一のために介護保険料を支払う。介護保険を利用せずに死ねたら幸福者であろう。介護症にならないように、介護予防に努めなければならない。わかっていても、なかなか実践できない。残りはピンピンコロリか?これもまた、難しいけれど。

                                  掲載 2019.07.20